2025年11月、長居公園から程近い通りに突如現れた「N.C.C」こと、長居カルチャーセンター。カフェでありショップであり、ギャラリーでもあり……どんな場所? と問われると即答しがたい形態だが、感度の高い若者を中心に人々の関心を引き、早くも地域内外の人を呼ぶハブになりつつある。
仕掛け人の岩崎良さんと河辺拓さんは、それぞれ店舗経営の経験を持つ同世代。アパレルと器という異なる領域で、それぞれ審美眼を培ってきた。そんな2人のセンスは、N.C.Cにも色濃く反映されている。
本来交わらなかったはずの2人がどのように交わり、この空間が出来上がったのか。N.C.Cで何が起きつつあるのか。そして、見据える将来の景色とは? 長居エリアに新たな風を吹き込んだ2人のもとを訪れ、開店までの経緯や展望を尋ねた。

アパレルショップ「A(C)(ええかっこしい)」を営む。
A(C)では阪神タイガース公式コラボアイテムも制作。

作家ものの器やオブジェ、古物なども扱う雑貨店「futou」を経営。
出会ってすぐに「タイプが違うな」って
——出会ったきっかけは?
2020年、コロナのタイミングで開かれた交流会でした。西田辺や昭和町、阿倍野あたりの個人事業主が15〜16人いて、その中に、河辺さんもいたんです。実は前から、河辺さんの「futou」は知ってたんですよ。オンラインストアもよく見てて。だから顔を見たときに「あっ、この人だ」と。
僕は人見知りなので、自分から近づいていける感じでもなく……。岩崎さんのほうから声をかけてくれたんだと思います。
惹かれるものがあったんです。タイプが全然違うって一発で分かったのに。むしろ違うからかな。futouは、地元の人が日常的に通う店というより、わざわざ遠方から、そこを目当てにして人が来る場所。そういうスタイルで店を成り立たせているのがカッコよくて、興味を持っていました。おしゃれな雰囲気で、シンパシーというより嫉妬に近いのかな(笑)
自分のセンスはニッチで、広い人に刺さるものではない。そこは自覚してます。逆に自分は、岩崎さんみたいに門戸を広げる、というのが苦手で。
お互いにキャラが違いすぎるから、かえって構えずに済んだのかも。最初は店のスタッフも交えて食事に行って、そこから少しずつ関係が深まっていった感じでしたね。
——一緒に新たなお店を立ち上げる、というのはそこからすぐ決まったのですか?
「一緒に何かをやろう」という話になったのは割と早かったですが、具体的に何をやるかはふわっとしてて。
物件もあちこち見て回ったけど、ここに決まるまでには3年くらいかかりました。

あえて、敷居の高さを感じる空間づくりを意図した
——長居に決めたのはなぜですか?
自分たちの生活圏に近くて、既存の店もやりながら管理しやすい場所がいいなと思って長居を選びました。かつ、長居の中でも、大通りと住宅地の間がよかった。大通り沿いは家賃が高く、思い描くコンセプトにも合わない。商店街も考えたけど、にぎやかすぎる。そうなるともう、この区画しかない、という風になりました。
——かなり限定的ですね。場所を選ぶ上で重視したというコンセプトについても、詳しく聞かせてください。
はっきりと言語化できているわけではないんですけど、せっかく2人でやるなら、お互いのセンスが生きる形にしたかった。河辺さんのお店のような——言うなれば「敷居の高さ」がちょっと感じられる場所にしたかったんです。通りかかった人が誰でも入れる、というよりは。
でも、提供するものは親しみやすいものに、というのも大切なテーマでした。これは岩崎さんの強みですよね。
キャッチー担当なので(笑)
——それでは、場所については両者即決ですか?
いえ、河辺さんは「ふぅん、そうですか」という感じで、最初は反応が鈍かった。
正直、最初はピンときてなかったんですよね。
僕がけっこう説得した形ですね。
押し切られました(笑)。でも、岩崎さんがそこまで言うなら、ここでやってみようと思った。それこそ「タイプが違う」「自分にはない価値観やスキルを持っている」という前提が、いい方向に働いたのかもしれません。このときまで、何をやるのかも、きちんと決まっていませんでしたよね?
そう。もともとは、物販と飲食が7対3くらいになるイメージでした。でも、見つかったのがスナックだった物件で、使える物が多く残っていた。それで、飲食の比率を高くしようと決めました。長居公園が近いのもあり、テイクアウトも意識した業態にしていこうと思って。
のちにN.C.Cを形づくっていく両者の役割分担は、物件選びの段階からその原型が出来上がっていたようだ。偶然の出会いを経て生まれた空間は、オープン後も新たな出会いを創出。やがて、2人だけのものではなくなっていく。(つづく)

